魂の骨格 【Figuarts Zero chouette SPECIALインタビュー】講談社 小佐野文雄さん

――そもそも原作者である武内直子先生は、どういった着想からウラヌス&ネプチューンという新セーラー戦士を編み出されたのでしょうか?

ご存じのとおり、ウラヌス&ネプチューンコンビが登場したのはシリーズ第三章の「デス・バスターズ編」から。でも先生は、その前章である「ブラック・ムーン編」で、すでにちびうさに絡めて、冥王星を守護に持つセーラープルートという新戦士を登場させていたわけです。
これは僕の想像ですけど、たぶん先生の中では、すでにその時点で天王星や海王星、あるいは土星をモチーフにした新戦士をイメージされていたんじゃないでしょうか。具体的な話をしたわけではありませんが、連載の打ち合わせの際、端々でそうした構想を語ってらっしゃったことを記憶していますので。

――実際の天体に照らしてのキャラクター付けについては?

先生は、高校時代天文学部だったそうですから、星座や天体については鉱物と同じくらいお詳しかった。先生のことですから、きっと両惑星の特性についても詳しく、しっかりキャラ作りに活かされていたと思います。

――それにしても天王はるか=セーラーウラヌスのインパクトは絶大でしたね。

そうですね。事実、ウラヌス&ネプチューンが出てくるようになってからはファン層も大きく様変わりしたように思います。そもそもアニメ版『美少女戦士セーラームーン』ファンというのは、小さな女の子たちがメインではありましたが、一定数大人のファンがついていました。そのほとんどが男性のファンだったんですが、ウラヌス&ネプチューンの登場を機に、明らかに女性のファンが増えていったんです。いわば今日でいう「百合」好きの方々に支持されたのではないでしょうか?

――そうしたかつてのファンたちが、今なおウラヌス&ネプチューンの強い支持基盤になっているのでしょうか?

いえ、むしろ、かつてのメインファンの女の子たちが新たなウラヌス&ネプチューン支持層になっています。成長につれて徐々に惹かれていったのではないかと思います。
話は少し逸れますが、最新の人気キャラクター投票の結果を見ると、ブラック・レディとかクイン・ベリルとかの得票数がすごく伸びているんですね。あの当時はまだ小さかったからよくわからなかったけど、今だったら彼女たちの気持ちが理解できる、単なる敵、嫉妬の塊りではなかったんだという方が多いです。
そういう意味では、ウラヌスなんかもファンの捉え方がずいぶん変わりました。あの当時は『なかよし』読者はもちろんのこと、一般のファンにすら肉体的な性と精神的な性との差異を理解してもらうのがなかなか難しかったんです。でも今ではジェンダーであるとかLGBTであるとかへの理解が深まってきていると感じます。彼女たちの存在を理解していただける人が増えたのは大変喜ばしいことです。ウラヌス&ネプチューンの二人の関係性も同じことが言えるかと思います。

――ウラヌス&ネプチューンの場合、それだけ先駆的なキャラクターでもあったわけですね。続いて、今回の「Figuarts Zero chouette」についてお話を聞かせてください。

これはBANDAI SPIRITSの開発担当者さんとも初期の段階から話し合ってきたことなんですが、とにかく今回フィギュアのペア感を大事にして行こうと。ウラヌス&ネプチューンという表裏一体的なコンビネーション感をまず前面に打ち出そうというのが第一にありました。
第二としては、ペア感を押し出しつつも、一体一体の魅力も充分に高めていこうというもの。ウラヌスとネプチューン、それぞれ個別の熱烈なファンがいるわけですから、単体としての完成度も重視していきたかったんです。

――中でも苦労されたのはどのような点でしょうか?

意外と大変だったのは、ウラヌスが手にしている剣=スペース・ソードですね。スペース・ソードってその時々で微妙に大きさが変わっていたりするものですから。特に何度も修正していただいたのが、刀身の反り具合と、剣の持ち方やポージングでした。比較的大きさが安定しているネプチューンの鏡=ディープ・アクア・ミラーに比べると、やはりそこは格段の難しさがあったように思います。
加えて頭を悩ませたのがウラヌスの脚の長さ。ネプチューンは割とすぐに決まったんですけど、ウラヌスの脚のポージングは担当者さんともずいぶん検討を重ねました。男性的だと違うし。かと言って、あまり女性的すぎるとそれはそれで違和感が出てしまう。その絶妙の塩梅を表現するため、担当者さんや原型師さんには本当に根気よく頑張っていただきました。
ただ、こればかりは実際に挑んでみなければわからないことです。たしかに紆余曲折はありましたが、チャレンジしてみる価値は十分にあったと思っています。

――それにしても女性ファンの目を意識したフィギュアという点では、これまでにない画期的な試みとなりましたね。

そうですね。これまでフィギュアというと圧倒的に男性目線を意識したものが割と多かったんですが、今回は女性の目線を意識した作りになっています。それだけに、当然こだわるべきポイントも違ってきています。男性は、コレクション的に複数のフィギュアを並べる傾向が強いんですが、今回の商品は女性のお部屋に飾れるもの、それもその他大勢の小物や装飾品の中でも、しっかりワンポイントとして輝きを放てる商品を目指しました。
今回初めてフィギュアを購入される女性ファンの方も多いことでしょう。でも、そんなみなさんのご期待にしっかり応えられるだけのクオリティーは保持していると思います。ぜひこの機会に、フィギュアの世界にも足を踏み入れてみてください。もちろんこれまでと同様、男性ファンの方々にも手にとっていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。



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