魂の骨格 第3回 オリジン・オブ・バルキリーのオリジンを探して(前編)

オリジン・オブ・バルキリーのオリジンを探して(後編)


「超時空要塞マクロス」に登場した可変型戦闘機・バルキリー。TVシリーズ放送当時の1982年、その変形メカニズムをパーフェクトに再現した完成品モデルがあった。それが現在「オリジン・オブ・バルキリー」として発売中の、1/55スケール・バトロイドバルキリーである。今も決して色褪せることのない、バルキリーの完全変形ギミックはいかにして生みだされたのだろうか?
本項では、その足取りを追ってみたい。


■ 企画の立ち上げ

--1982年当時、三井猛夫さんはタカトクトイスの企画課で課長を務めていた。まずは、三井さんに「超時空要塞マクロス」の商品企画立ち上げの話を聞いてみたい。

三井 ビックウエストさんから企画が持ち込まれた時、当時の上司から「この作品でどんな商品が作れるか考えて欲しい」という相談を受けました。ただ、タカトクトイスのトップは、バルキリーではなくマクロス艦で勝負したいという気持ちがあったんです。超弩級戦艦が変形してロボットになるという面白さに惹かれていたようですね。けれども、私たち企画課としてはバルキリーを中心にしたかった。番組内容はまだわからないけど、マクロスよりもバルキリーの方が玩具として楽しいものになると思ったんです。それで、バルキリーを中心にしたラインナップの企画を提出したら、上から「何を考えてるんだ!」って怒られました。そこで社内の他のセクションと意見交換をしたりとか、1~2週間かけて色々と粘った末に、企画課の部長が私たちの気持ちを理解してくれたんです。こうして、ついにバルキリーを商品企画の中心に持っていくことができました。


■ 商品作りのはじまり

--この時の三井さんたち企画チームの奮闘がなければ、1/55バルキリーが生まれる可能性は、限りなくゼロに近かったと思われる。もしもタカトクトイスがバルキリーではなく、マクロス艦を中心にした商品展開を行っていたとしたら、変形ロボットの歴史そのものが変わっていたかもしれない……。
商品企画が成立したところで、次は具体的な商品作りの現場に目を向けてみよう。

三井 バルキリーのデザインは素晴らしいものでしたが、本当に完全変形できるのかどうか、という疑問はありました。それを河森(正治)さんに投げたところ、紙と爪楊枝で作った手製のペーパーモデルを持ってきてくれたんです。その後、河森さんから「試作をこちら(スタジオぬえ)で作らせてほしい」という提案をいただきました。頭の中にあるギミックを完成させるためには、自分が信頼できる試作屋さんにお願いしたかったそうです。それから二ヶ月も経たないうちに、バルキリーの木型モデルが上がってきました。とても完成度の高いモデルに仕上がっていて、これを見せた時に専務からやっとバルキリーにお墨付きをもらうことができたんです。


■ 変形ギミックへのこだわり

--河森さん入魂の木型モデルを参考にして、試作品が作られることになる。1/55バルキリーの試作と生産を担当したのはラジオトロン(いわゆるラジコン)やトイガンの製造などで知られるマツシロであった。三井さんはマツシロの設計部がなかったら、1/55バルキリーがこんなに良い商品にはならなかったと語る。

三井 マツシロさんの設計部には才能に溢れる方々が揃っていました。特に設計図面を書いた人が本当にすごい方でね。普通は設計図というのは部品図、展開図など紙を何枚も使うものですが、その方は一枚の大きな方眼紙に全ての設計図を書いてしまうんですよ。しかも実線と点線で描いてあって、細かく見ると1ミリの方眼の中に3本の線が入っていたりとか、本当に精密で。しかも、その型図や部品図をしっかり読みとれる人たちも社内にいるから、素晴らしいものが上がってくるんです。そこを信頼して、バルキリーもマツシロさんにお願いしました。それで試作品が上がってきましたが、アニメーションのバルキリーよりも少し角張っているように感じられたんです。マツシロさんの技術担当の方が「この方がおさまりが良い」と判断したと言うので、信じておまかせしました。確かにこれだけの大きさのロボットを別の形に変形させるには、ヒンジや関節に大きな負担がかかります。そこの計算があって、この形状が生まれて来たんだなぁ、ということで納得しました。変形ギミックの一つ一つがカッチリ決まってますし、ラチェットが全身のあちこちに入っていて、採算度外視で作っているのも伝わってきましたから。アニメの形に近いから売れる商品もあると思いますが、バルキリーに関しては変形モデルとしての完成度を優先することに決めたんです。


■ 一躍大ヒット商品へ

--こうして、1982年11月にVF-1J(一条輝タイプ)が発売。同年の年末商戦で20万個以上を出荷して、一躍大ヒット商品へと成長した。その後、タカトクトイスの1/55バルキリーシリーズはVF-1S(1983年2月)、VF-1Jマックスタイプ(1983年4月)、VF-1Jミリアタイプ(1983年4月)、VF-1A(1983年7月)の全5種が発売。さらにアーマードバルキリー(1983年5月)、スーパーバルキリー(1984年2月)といったオプションパーツも商品化された。これら1/55バルキリーシリーズの出荷数は、1983年末の時点で合計100万個を突破している。なお、復座型のVF-1Dに関しては生産ラインが他の製品で一杯だったために、発売が見送られたという。

三井 バルキリーのプロダクトというのは、今ハイターゲット向けにやっている企画を20年以上前にやってたということなんですよね。あの頃、タカトクトイスでは「タイムボカン」とか合体ロボット路線もあったけど、私はハイターゲット物もやってみたかったんです。そこへ「マクロス」はまさに良いタイミングで来てくれたと思います。


■ タカトクトイスの倒産

--しかし、不幸にもタカトクトイスは1984年5月25日に倒産する。劇場版「愛・おぼえていますか」の公開(7月7日)を間近に控えた時期であった。タカトクトイスの倒産後、1/55バルキリーは金型を管理していたマツシロによって、海外向けに生産が行われていたという。しかし、マツシロが経営危機に陥ったことがきっかけとなり、バルキリーの金型はバンダイへ移譲されることになる(生産は引き続きマツシロが行った)。


オリジン・オブ・バルキリーのオリジンを探して(後編)へ続く



スーパーバルキリーVF-1A(一条輝機)
オリジン・オブ・バルキリー
スーパーバルキリーVF-1A(一条輝機)



価格:9,450円(税込)
発売日:2008年8月30日
対象:15才~


商品詳細ページはコチラ
 


森島 隆之

三井 猛夫 (みつい たけお)
1950年10月27日/東京都生まれ。

1974年タカトク入社。同社にて「タイムボカンシリーズ」「冒険ファミリー ここは惑星0番地」など主にTVキャラクターの商品企画を担当した。1984年にビークラフトを設立。
現在もインダストリアルデザインを中心に活動中。

 

五十嵐 浩司

五十嵐 浩司 (いがらし こうじ)
1968年生まれ/青森県出身

・初めて手にした1/55バルキリーはVF-1Sロイフォッカースペシャル
・編集者として、ホビー雑誌各種の他、各種単行本、DVDやCDの解説書に携わる

 


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